川崎の社労士|顧問契約・就業規則のことなら
鈴木社会保険労務士事務所
〒212-0011 神奈川県川崎市幸区幸町2-681-24(JR川崎駅徒歩7分・京急川崎駅徒歩6分)
「固定残業代」は聞いたことがあるけど、
「固定深夜手当」というのは耳にしたことがないという方も
いらっしゃるのではないでしょうか。
これは通常の深夜割増賃金とは異なるものというわけではなく、
深夜割増賃金の支払方法の一種といっても良いかもしれません。
その深夜労働に対する割増賃金について、
固定残業代のように「あらかじめ一定額を支払う形」にすることで賃金コストの平準化を図ることができるため、
当事務所ではそのニーズに応じてご提案することがあります。
本記事では、固定深夜手当を検討する際に押さえておきたい基本的な考え方と、
設計・運用上のポイントについて整理します。
深夜の時間帯(22時~翌朝5時)に勤務した場合、
法律上、25%の深夜割増賃金を支払わなければならないこととなっています。
固定深夜手当とは、あらかじめ一定時間分の深夜割増賃金を毎月定額で給与として支払う制度です。
たとえば、
「深夜手当は月150時間分の深夜割増の定額見込払いとして支払う」
といった形で設計することになります。
固定残業代のような残業代だけでなく、
深夜割増賃金についても、
一定の要件を満たしていれば、あらかじめ定額で支払う「固定手当」とすること自体は否定されていません。
ただし、固定残業代と同様に、
をはっきりさせておく必要があります。
固定残業代の中に含めて支払う形式もあるものの、
後述しますがそれは避けたほうが良いよいでしょう。
ここで、深夜割増賃金の割増率について整理しておきましょう。
お客様とお話をしているときに、
私が「深夜労働に対しては、深夜割増として時間単価の25%を支払わなければなりません」とご説明すると、
「あれ?深夜割増って150%じゃなかったでしたっけ?」
と聞かれることがあります。
このご指摘は必ずしも間違っているわけではないのですが、
「残業の125%」と「深夜の25%」を合算して考えた結果として、
「150%」という割増率が出てきていることになります。
つまり、「深夜労働は常に残業の時間帯に発生する」という考え方に基づいていることになります。
これは、その会社の労働時間体系にもよると思いますが、
深夜労働は必ずしも「残業」として行われるとは限りません。
例えば「始業14時、終業23時(休憩1時間)」という飲食店のシフトの場合です。
このケースは実働8時間なので、23時で仕事を終えれば残業はありません。
しかし、22時~23時という1時間の深夜労働が発生しているため、
深夜割増の支払が必要となります。
同じようなことは、工事会社や病院などの夜勤でも考えられますし、
フレックスタイム制における深夜労働でも起こりうることです。
また、「休日労働が深夜時間帯に行われる」というケースも考えられます。
そのため、私はよく「深夜割増は残業や休日労働の割増と合算せずに、常に分けて考えましょう」とお伝えするようにしています。
残業の125%や休日労働の135%はそれぞれ計算し、
その月の深夜労働については別カウントで集計して25%を深夜割増として別で支払うようにすることをお勧めします。
その場合、就業規則(給与規程)との整合性が問われることとなるので、
必要に応じてこれらの規程や雇用契約書(労働条件通知書)の記載も見直す必要があります。
固定深夜手当を有効に機能させるためには、以下の点を明確にしておく必要があります。
●基本給との明確な分離
固定深夜割増部分と基本給が明確に区分されていることが必要です。
内訳が不明確な場合、制度として認められない可能性があります。
「基本給の中に月30時間分の深夜割増賃金を含む」
というような形は避け、
「固定深夜手当は月30時間分の深夜割増賃金として支払う」
のように基本給とは「分離」した形にすることがポイントです。
●固定残業代の中に含めない
固定残業代制度を採用している会社で、
「固定残業代は時間外労働及び深夜労働に対する割増賃金の定額見込払いとして支給する」
のように規定しているケースも見受けられます。
このような形式は、絶対にダメだとは言い切れないものの、
何時間分の時間外労働と何時間分の深夜労働の割増賃金が含まれているのかが明確ではなく、
場合によっては認められないリスクもはらんでいます。
基本給と同じように、明確に分離しておくことをお勧めします。
●何時間分かの明示
固定深夜手当が「何時間分の深夜労働に対する割増賃金として支払うものなのか」を明確にする必要があります。
それを就業規則や雇用契約書等に明確に記しておき、
「労働者側が何時間分の残業代なのか」が分かるようにしておくことが重要です。
月何時間分とするかは会社側の設計次第です。
深夜労働がそれほど多くない場合は10時間や20時間でも良いでしょう。
一方で飲食店など恒常的に深夜勤務が発生する場合は50時間ということも考えられますし、
夜勤主体の勤務体系であれば「1日あたり7時間×22日=154時間」ということもありえます。
要は、時間の長さの問題ではなく、実態に合った見込み時間にすべきということです。
●就業規則・雇用契約書・給与明細書との整合性
まずは、就業規則(給与規程)に固定深夜手当についての記載をしておくのが必須です。
できれば「月●時間分」も明記したいところですが、
部署ごとや個人ごとに異なる場合は、
少なくとも「含まれる時間数については雇用契約書で個別に明示する」というような記載を入れておくべきでしょう。
そして、「実際の深夜労働が月●時間を超えたら、その差額を別途支払う」ということも記載しておきます。
次に、雇用契約書(労働条件通知書)にも固定深夜手当のことを明記します。
雇用契約書では賃金に関する明示は必須事項となりますが、
固定深夜手当の名称(手当名)や含まれる時間数も、就業規則の内容とリンクさせるようにします。
なお、本コラムでは「固定深夜手当」という名称を用いていますが、
必ずしもそれに限定するわけではありません。
例えば「夜勤手当」「深夜加算手当」などの名称でも構いません。
最後に、給与明細書への記載も確認しておきましょう。
就業規則や雇用契約書に書いてある固定深夜手当の名称と同じになっているかがポイントです。
書類上の記載と実際の運用が一致していない場合、トラブルの原因になります。
固定深夜手当を有効に機能させるためには、前述の通り制度設計をしっかり行うことは大前提です。
それに加えて、運用面もしっかりと管理していく必要があります。
●超過分の支払いを毎月行う
固定深夜手当は、原則として含まれる深夜労働時間数を予め明示することとなります。
その明示した深夜労働時間を超えた深夜勤務が発生した場合は、
都度超過分を計算して支払う必要があります。
この超過分の支払いをしていないと、
最悪の場合、固定深夜手当として払っているつもりの給与が、
一切深夜割増賃金として認めてもらえないという事態も想定されます。
●基本給等が昇給したら、固定深夜手当も変更する
固定深夜手当は毎月一定時間数の深夜割増賃金をあらかじめ見込んで固定で支払う制度です。
ということは、深夜割増の計算基礎となる基本給やその他の手当が改定されたら、
それに合わせて固定深夜手当の金額も改定する必要があります。
これを忘れてしまうと、
例えば30時間分と見込んでいた固定深夜手当が、
いつの間にか30時間に満たない金額になってしまっていることになります。
●含まれる時間数に見合った固定深夜手当とする
これはどういうことかというと、
例えば時間単価が1,500円の人の深夜割増は、「1,500円×25%=375円」です。
この方について、50時間分の深夜割増賃金を見込む場合、
固定深夜手当は
「375円×50時間=18,750円」
に設定しましょうということです。
これを、例えば「固定深夜手当は月額50,000円」という具合に設定してしまうと、
深夜割増賃金の単価からして不釣り合いとなってしまいます。
場合によっては、固定深夜手当のほうに金額を多くカウントして基本給を減らすことで、
意図的に深夜割増単価を低くしようとしていると疑われかねません。
固定深夜手当は、どのような会社に適しているのでしょうか?
本コラムの前述の部分において、
飲食店や工事会社、病院等を例として挙げましたが、
私は業種ではなく「賃金コストに対する考え方」で導入の是非を検討するのが良いと考えています。
深夜割増賃金は、そもそも実際に発生した深夜勤務分に対して支払えば良いものです。
なにも固定で払う必要はないわけです。
1時間あたりの深夜割増を計算し、都度、実際の深夜労働時間に対して払えば法的には問題ありません。
それをわざわざ固定深夜手当として設計することにより、
「あらかじめ一定程度予想される深夜勤務に対して毎月の賃金コストを平準化できる」
というメリットが生まれます。
例えば、店舗営業時間の関係から必ず深夜勤務がある飲食店の正社員を、
月額40万円で雇用したいケースで考えてみましょう。
基本給40万円としてしまえば、残業や深夜割増は別で計算することになるため、
残業や深夜勤務の実績に応じて賃金コストは変動します。
これを、
【基本給】292,000円
【固定残業代】86,000円(残業月40時間分)
【固定深夜手当】22,000円(深夜勤務月50時間分)
として設計(月平均所定労働時間172時間の場合)すると、
月40時間までの残業と、月50時間までの深夜労働までは、
「月額40万円」で賃金コストを固定することができるようになります。
求人募集時の条件の違いという観点はあるものの、
あくまでも雇用する会社側からの視点で考えるとメリットと言えるかもしれません。
これは何も、飲食店に限った話ではありません。
よくあるご相談として、
「テレワーク時に勝手に深夜勤務する人がいて、深夜割増を払わなければならないので困っています」
というものがあります。
そのようなケースでも、固定深夜手当は有効に活用できます。
深夜勤務が稀な職種でも、本人都合で発生してしまう深夜勤務の割増賃金を毎月の定額給与に含めておけば、
不要な軋轢を抑制することにもつながります。
もちろん、このケースでは「勝手な深夜勤務」をさせないための取組も必要となることは言うまでもありません。
このように、固定深夜手当を採用すべきかどうかは
その会社の賃金や労務管理に対する考え方次第ということになります。
このように固定深夜手当は、その必要性を十分に検討した上で、
適切に設計・運用すれば有効に機能する制度です。
「固定残業代は聞いたことがあったけど、固定深夜手当のような考え方があるのは知らなかった」
というご意見も頂戴することがありますが、
賃金体系というのは考え方次第でうまく組むことができるものです。
社労士は労働基準法や最低賃金法といった労働法に関する知識はもちろん、
多くの会社の賃金体系に触れてきているため、
柔軟なご提案をできる存在でもあります。
賃金体系の設計や運用についてお困りのことがあれば、遠慮なくご相談いただければと思います。
鈴木社会保険労務士事務所
特定社会保険労務士 鈴木達朗
2000年1月社会保険労務士資格取得。大手社労士事務所勤務後2006年3月に独立開業し、これまでのべ320社以上の中小企業を支援。上場企業の顧問社労士を務めるかたわら、従業員数名~数十名の中小企業にも幅広くする。手続き・給与計算・就業規則の整備など実務に即した労務管理を今も現場の最前線で支援。制度の正しさだけでなく、現場で運用できる形を重視した提案が得意。
〒212-0011 神奈川県川崎市幸区幸町2-681-24
JR川崎駅徒歩7分・京急川崎駅徒歩6分
8:30~17:30
フォームでのお問い合わせは24時間受け付けております。
土曜・日曜・祝日
当事務所は、個人情報を適切に取り扱っている社労士事務所として、全国社会保険労務士会連合会より認証を受けています。安心してご用命ください。