これから会社を作る方へ伝えたい
5つのメッセージ

残業代だけはきちんと支払う

何を当たり前のことを…と思われるかもしれませんが、意外とできていないのが残業代(時間外手当、休日手当など)の正しい計算や支払いについてです。時間外の25%(月60時間を超える部分は50%)の割増率や、休日の35%の割増率という数字自体はだいぶ浸透しているとは思いますが、ここで改めて真の意味での正しい計算を理解しておく必要があります。

時給制のパートやアルバイトなら、時間給の25%とか35%の割増をすれば良いので簡単ですね。一方で、月給制の社員は、月給を時間単価に戻さなければなりません。その場合、どうやって時間単価の計算を行えばよいのでしょうか?

まずは計算基礎となる月給に何を含めるかという問題。月給が基本給だけで手当が無いのであれば、基本給だけが計算基礎になります。月額固定の手当がある場合は、基本的にその手当も計算基礎に含まれます。計算基礎から除くことができるのは、以下のように決まっています。
・家族手当(一定の要件あり)
・別居手当(単身赴任手当)
・住宅手当(一定の要件あり)
・通勤手当
・子女教育手当
・臨時に支払われた賃金
・1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金

 

これを見ると、皆勤手当・精勤手当の類は「除くことができる手当」に含まれていませんから、意外かもしれませんが、含めなければなりません。逆に載っていない手当で、含めなくても良いものがあります。それは「固定残業代」です。

大手企業を含め、比較的多く企業で月20時間分とか30時間分とかの固定残業代を支払う給与体系がとられています。この固定残業代は、上記の「計算基礎から除くことができる手当」には掲げられていませんが、残業代の計算基礎から除くことができます。逆に言うと、除かなければなりません。本来残業代であるはずの固定残業代を基礎としてさらに残業代を払うというのはおかしいからです。固定残業代を基礎に入れて残業代を計算していると、「それって固定残業代じゃないのでは?」と疑われてしまいます。「固定残業代」という名称なら基礎に入れないことは想像がつくかもしれませんが、例えば「役職手当」や「営業手当」を固定残業代相当として払っている企業なら、その役職手当や営業手当を計算基礎に入れてしまってはおかしいということです。

計算基礎をはっきりさせたところで、次に着目したいのは、「計算基礎となる月給を何時間で割るか」ということです。何時間でも良いわけではありません。時間数が多ければ多いほど、時間単価が下がってしまうので、一定のルールがあります。

そもそも時間単価というのは、「所定労働時間働いた場合の、1時間あたりの賃金単価」ということになります。所定労働時間を超えて働いたから時間外手当=残業代を支給するわけなので、その所定労働時間が1ヶ月あたり何時間となるのかという視点に立つ必要があります。

土日祝日休みで、年末年始の12/29~1/4が休日の会社があるとしましょう。1年間は52週ですから土曜日・日曜日で年間104日、祝日は年間16日、年末年始は祝日である元日を除き5日、合計すると年間休日は「104+16+5=125日」ということになります。そうすると、365日から125日を引いた240日が「所定労働日」ということになります。1日8時間勤務が基本の会社なら、「240日×8時間=1920時間」が1年間の所定労働時間になりますね。この1920時間を12ヶ月で割れば、1ヶ月あたりの平均所定労働時間は160時間という計算が成り立ちます。つまり、この会社では、時間単価を計算する際には、月給を160時間で割って計算しなければならないということです。

曜日や年末年始とか関係なく、とにかく週休2日という会社もあります。その場合は「(365-104日)×8時間÷12ヶ月=174時間」という計算となり、月給を174時間で割って時間単価を計算しなければなりません。たまに、176時間とか184時間という時間数で割っている企業をお見受けしますが、ごく一部の例外を除き、174時間を超える時間で割っていることは「単価を低くする違法な取り扱い」となってしまうので、見直す必要があるでしょう。


時間外手当や休日手当だけでなく、深夜労働をさせた場合の深夜割増も確実に払うようにしましょう。深夜労働とは、22時から朝5時の時間帯の労働を指します。この時間帯に労働させた場合は、前述の時間単価の25%を深夜割増として支払う必要があります。これは、管理職だから残業代を払わないという扱いをしている従業員に対しても、免れることはできません(管理職にも深夜割増は必須です!)。

なお、よく「深夜は150%で払わないといけないんじゃないの?」と聞かれることがあります。答えとしては「その深夜労働が時間外労働なら、結果的にはそうなります」という感じでしょうか。150%というものの内訳は、残業代としての125%+深夜割増の25%です。10時~19時(休憩1時間)が所定労働時間の人が23時まで4時間残業したら、19時~22時の3時間は125%、22時~23時の1時間は150%というのが正しい考え方です。しかし、世の中には21時~朝6時(休憩1時間)が所定労働時間の人もいます。その人は残業自体はしていないので、22時~朝5時の7時間分だけ深夜割増分として時間単価の25%(150%ではない)を払えば良いのです。休憩がこの深夜時間帯にあれば、6時間分だけで良いということになります。

最後に、固定残業代制をとっている会社については、実際の勤務時間に応じて、その固定残業代分を上回る残業代等があったのであれば、その差額はしっかり毎月支払うようにしてください。これは非常に重要です。「賞与でその分見ているから」は通用しません。毎月、清算するように心がけることが必要です。これをしていないと、固定残業代は残業代ではなくなり、ただの手当、しかも残業代の計算基礎に入れなければいけない手当となり、さらに残業代を一銭も支払っていない状況となるため、過去に遡及して残業代を請求された場合は、数百万円にものぼる莫大な支払いを求められるリスクがあります。


 

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