これから会社を作る方へ伝えたい
5つのメッセージ

手当を必要以上に増やさない

従業員の給与体系を考えるときに、どういう構成にするかで迷う経営者は多くいらっしゃいます。構成というのは、「基本給以外に手当を設けるべきなのか、設ける場合はどんな手当が良いのか」ということです。

まず、これを考える前に、誤解を解いておきたいことがあります。それは、「基本給を大きくすると、賞与や退職金のときにその金額が多くなってしまうから、基本給は低くしておいた方が良い」というものです。

賞与は、「●ヶ月分」という言われ方をすることは確かに有ると思います。それを想定して、「例えば3ヶ月分だと、基本給が多ければ賞与も多くなってしまうから、基本給は低くすべき」という理論が上記なのですが、それは「何の何ヶ月分か」という議論を抜きにして語られていたり、そもそも賞与額設定の考え方に固定観念があったりするために生じる誤解に過ぎません。

賞与も退職金も、「●ヶ月分」で決める必要はなく、法律上もそのようなルールはありません。企業ごとに賃金規程や退職金規程でどのように計算方法を決めたかによって金額が決まってくるものです。創業間もない小規模な企業であれば、一般的には、賞与の計算方法については「業績等によって会社が都度決定する」という濁した書き方をしておくことが多いです。退職金については、退職金の計算方法を濁すことは難しいですが、創業間もない時期に退職金規程を整えるケースの方が珍しく、最初は退職金制度がないことが当たり前です。のちに、退職金制度を作ろうとした際に、基本給を元にした計算にしなければ良いだけの話です(退職金の計算方法はいかようにも決めることができます)。

報道で、賞与の妥結額が「今年は●ヶ月分になった」という報道がされることがあるため、その点から生じる誤解なのかもしれません。しかしそれは、その会社の賞与の決め方が基本給を元にしているからであって、全ての会社に当てはまることではないのです。ですので、基本給の多寡は、賞与にも退職金にも影響しないと考えてください。


では、各種手当については、どのようなときに設定すべきなのでしょうか。

手当というのは、例えば「役職手当」なら、一般的に役職に応じた責任度合いに応じて決められる手当ですし、「皆勤手当」なら欠勤・遅刻・早退無しに全てフル出勤できた時につく手当です。このように、「込められた意味」があるのが本来の姿です。


本来の姿と書いたのは、企業によっては、手当に込められた意味が薄れてしまって、何のためにつけている手当なのか分からなくなってしまっている会社があるからです。「住宅手当」については、そういう「意味が薄れてしまっているケース」が散見されます。

基本的には、意味のない手当は設定すべきではありません。というのも、「同一労働同一賃金」という考え方があって、ひと言でこれを語るのは難しいですが、正社員のためにに良かれと思って設けた手当が、パートやアルバイトにも支給しなければならないとされてしまうケースが出てきているためです。すべての手当がそうだということではないのですが、例えば皆勤手当
・精勤手当の類は、「パートもアルバイトも、日数や時間は短いものの、シフトで定めた勤務分はきちんと出勤してもらうことが期待されていることは変わりなく、パートだからと言って皆勤手当を支給しないというのは不公平である」とい裁判例が出ています。では、何の手当なら大丈夫かというのは、その手当ごとに込められた意味によって判断することになりますから、一概に言えないのです。その意味で、不用意に手当は設定すべきではないと当事務所考えています

一方で、「能力に応じた給与体系にしたいので、基本給以外に能力給を設定したほうが良いでしょうか?」というご質問を頂くことがあります。これは、ある程度企業が成長していった段階なら、そのようにしたほうが良いケースもあると思いますが、創業間もない企業なら、そこまでする必要はないと思います。

それは、能力を評価して給与に反映するなら、基本給の増減の判断要素に「職務遂行能力」を加えておけば済むからです。創業当初から人事考課を含めた人事制度が確立している企業は、ほぼ無いと思われます。基本的には、能力や経験、勤務成績、勤務態度、会社の経営状況等を踏まえて、給与額を社長が決めているケースがほとんどです。であるならば、能力部分だけを切り離して「能力給」とする意味は、それほど無いのではないでしょうか?それよりも、例えば昇給させる場合に、「あなたのどういった点を評価したからこの金額だけupすることにした」というのを、面談等でしっかり伝えることのほうが重要です。

「役職手当」についてはどうでしょう。「この人はマネージャー待遇で行くことになっているから、マネージャー手当をつけたい」という相談を頂くことがあります。もちろん、それ自体は悪いことではありません。ただ、一度決めた「マネージャーという役職に対する手当額」は、そう簡単に下げられるものではないというのは注意しなければなりません。今はマネージャーという役職しかなく、その手当は何円と決められるかもしれませんが、今後会社の発展とともに他の役職が色々出てきたときに、役職間のバランスから手当額を見直さなければならないケースが生じます。そうすると、最初に決めたマネージャー手当の金額がネックになることがあるのです。


では、手当を設けたほうが良いケースというのはあるのでしょうか?考えられるのは、「その手当がつくこと自体が、その業界では当たり前の環境になっていて、逆にその手当が無いということで採用活動時にネックになる」というケースでしょう。

例えば、薬局における薬剤師の採用では、薬剤師手当がつくケースは一般化しています。「ウチは薬剤師手当はないですが、それも基本給に含めて考慮しています」と言って理解してもらえれば良いですが、偏った見方をされてしまうと「薬剤師手当つかないのか~」と思われてしまうかもしれません。そういうケースなら、世間一般的な薬剤師手当の水準を研究し、それをつけておくのは重要なことだと思います。

長々と書いてきましたが、給与体系というのは追い求めれば追い求めるほど奥が深く、創業間もない時期であれば、安易に手当を増やすべきではないでしょう。基本給のみで十分だと思いますが、手当を支給するなら、そこに込める意味を十分考えて設定するようにしたいところです。

 

お気軽にお問い合わせください

お電話でのお問い合わせ・ご相談

044-522-8757

フォームでのお問い合わせは24時間受け付けております。お気軽にご連絡ください。

サイドメニュー

アクセス

住所

〒212-0011 神奈川県川崎市幸区幸町2-681-24
JR川崎駅徒歩7分・京急川崎駅徒歩6分

営業時間

8:30~17:30
フォームでのお問い合わせは24時間受け付けております。

定休日

土曜・日曜・祝日